「社会保障を充実させよう~誰もが安心して暮らせる社会を求めて」

集会宣言

 私たちは、2006年12月に改正貸金業法の成立と2010年6月の完全施行を勝ち取って高金利の引下げを実現した。その結果多重債務被害の発生は大きく減少した。これは「借りた方が悪い」という、いわゆる自己責任論と闘った結果の勝利であり、被害者の声を中心にすえて粘り強く活動した末の勝利だった。そして私たちは今、貧困問題という大きな課題に立ち向かうことになった。

 私たちは、誰もが失業、疾病、老齢、離婚死別等の家族関係の変化等(社会的障碍)により貧困に陥る可能性を持っている。2012年の日本の相対的貧困率は16.1%、17歳以下の子供の貧困率は16.3%と過去最悪の水準となった(2014年7月厚生労働省公表)。貧困のため十分な教育を受けることが出来ないことから、貧困が世代を超えて固定化されている現状にある。奨学金制度も全く不十分だ。多重障碍と言われるように複数の貧困に陥る要因を有している市民も多く、生命に関わる問題であることから、その救済は喫緊の課題である。しかし一方で、貧困状態から救済するための社会保障の分野でも自己責任が強く主張されている。市民の権利である社会保障を充実させるのは憲法25条に基づく国及び自治体の当然の公的責任であるが、自己責任論として公助を弱めつつ自助、共助の必要性を説く。現に社会福祉の諸場面での後退・縮小が見られる。私たちはこれに対して強く異議を唱える。

 戦争は最も非人道的な行為である。社会福祉とは絶対に両立しない。2015年度の軍事関係予算は補正予算を入れて5兆円を突破した。一方で政府は、介護保険や医療制度及び公的年金制度を改悪して2020年までの毎年、3000億円から5000億円もの社会保障費を削減することにしている。国が戦争に向かう時には社会保障費が削られ、代わりに軍事費が増えることは歴史が証明している。戦争で最も大きな被害を被るのは社会的・経済的弱者である。福祉と対極にある戦争を、絶対に許さないとの決意が必要である。

 私たちは、まずは社会的弱者や生活困窮者の声を聞き、これを結集する必要がある。私たち利用者自身も、複雑で分かりにくい社会保障制度について深く学習・研究してこれを有効に活用することが出来る力を身につける必要がある。そして多くの「社会保障相談員」を養成して相談体制作りを急ぐべきである。社会保障制度の充実・活用という一点で関係諸機関・団体・個人と幅広く連帯して大きな運動に盛り上げる必要がある。社会的弱者の声を組織化して、改めて現在の不合理な各種制度を見直すことを求め、以下のとおり宣言する。

1 最後のセーフティーネットである生活保護基準を引下げることは絶対に容認できない。また、老後の生活の拠り所である年金支給額の切り下げにも絶対反対である。財源不足を理由とした社会保障費の削減は許さない。不公正な税制を正して所得再分配機能の強化を図る必要がある。憲法25条の生存権に基づく社会保障が市民の権利であり国家の義務であること、社会保障の充実の必要性を明記した法律の制定を強く求める。

2 ワーキングプアの問題の解決には、蔓延する低賃金不安定労働の解消が必要であり、派遣労働の固定化につながる労働者派遣法の今回の改正に抗議するとともに、最低賃金については、少なくとも2010年の閣議決定のとおり「全国最低800円、全国平均1000円以上」を至急実現すべきである。また、フルタイムで働けば十分に生活できるだけの水準となるよう、さらなる最低賃金の引き上げを早急に実現すべきである。

3 子どもの将来に大きな影響を与えるのが教育である。貧困の連鎖を防ぐために奨学金を給付型中心とし、有利子奨学金は無利子とするべきである。更に、国際的公約となっている、大学等の学費の無償化も実現すべきである。

4 改正貸金業法の改悪を許さず、現状でも高すぎる利息制限法所定の制限金利の引下げを求める。現在の市場金利からすれば利息制限法の制限金利でもまだ市民の生活を破壊する高金利である。利息制限法の上限金利も大きく引き下げるべきであり、そうでなければ多重債務問題の根源を絶つことはできない。

5 ギャンブル依存症患者が536万人にも上るとの推計がある現状を踏まえ、国に対し、ギャンブルの危険性を周知するための教育、啓発活動、相談機関や治療機関の設置など、ギャンブル依存症の予防や治療態勢の充実を求める。また、依存症を生み出すカジノの売上で依存症対策を行うなど大きな矛盾であり、カジノ法案については断固反対する。

6 市区町村には、市民の命を守るサービスが整っており、役所はそれを届ける義務がある。自ら相談にくることができない、困っている、困っていそうな市民を、いち早く発見し、生活再建の支援をすることが求められている。相談業務のワンストップ化を進め、法律専門家との連携を強化し、生活困窮者への支援を強化することが必要である。 

7 国保料・地方税の滞納による差押が問題となっている。国保加入世帯の所得が大きく減少したのも滞納者増加の一因である。誰も滞納したくて滞納しているのではない。国保料・地方税の滞納は、生活困窮者の悲鳴であり、命の危機の信号である。全国の地方自治体には、この信号をしっかり受信し、生活再建の支援をして市民の命を守ることが求められている。

8 生活弱者の住み続ける権利の確立を求める。住まいは人権である。住まいは人間の生命と財産を外界の脅威から守り、安心と休息を確保するための最低限の設備である。賃借人の法的知識の乏しさにつけ込み、その権利が侵害されている事例が少なくない。賃借人の住み続ける権利を周知させ、賃借人の権利が不当に侵害されないようにするために必要な法的制度の確立を要求する。

9 戦争には絶対に反対する。経済的徴兵制とも呼ばれる、若者を貧困に追い込み兵員を確保することなどは絶対に許されるものではない。

2015年10月25日

第35回全国クレサラ・生活再建問題被害者交流集会in群馬 参加者一同